こんにちは、けいです。

匿名の質問箱に、こんな質問をいただきました。

「茨城県で公立小、中学校の校長をしている夫。60歳で役職定年後に大阪府に移住予定です。その時点で大阪府の公立校で教員として働くことは可能でしょうか?」

校長先生の奥さま(か、ご本人)からの質問です。定年が62歳・63歳と延びていく一方で、校長・教頭は60歳で「役職定年」になり、その先をどう働くかを自分で決めなければならない世代が、ちょうど今の50代後半です。「別の県に移って、そこで教員を続けられるのか」は、私の職員室でも話題になります。

答えを先に言うと、働けます。道は2つあって、①大阪府の講師登録(常勤講師・非常勤講師。年齢の条件なし、他県で登録中でも登録できる)と、②大阪府の教員採用選考テスト(令和9年度の受験資格は「昭和40年4月2日以降生まれ」=採用日時点で61歳まで。60歳以降に採用されると給料は7割水準)です。いちばん自然に思える③「再任用」は、茨城県を退職した人が大阪府で使うことはできません。再任用は、その県を定年退職した人のための制度だからです。

この記事では、この3つの道の条件と、お金の面で見落としやすい「退職金」「年金」「他県からの勤続年数」の注意点を、大阪府の受験案内・講師制度の要項・条例で確かめながら整理します。

📌 この記事でわかること

  • 役職定年(60歳)と定年(今は62歳、段階的に65歳へ)の関係——校長はいつ、どうなるのか
  • 道①:大阪府の講師登録。年齢の条件がなく、常勤講師なら月約31万円+ボーナス、非常勤なら授業1コマ3,010円(大阪市は3,110円)
  • 道②:大阪府の教員採用選考テスト。61歳まで受験できるが、60歳以降の採用は給料7割・定年まで1〜2年
  • 道③:再任用が「使えない」理由——定年前再任用短時間勤務も暫定再任用も、茨城県の制度
  • お金の注意点——60歳以降の退職は退職金が「定年退職扱い」になる特例、年金は65歳まで出ない、ボーナス・退職金の勤続年数は他県から引き継がれない

結論:働けます。道は「講師登録」と「採用試験」の2つ、「再任用」は使えない

道できる?年齢の条件身分・お金のイメージ
① 大阪府の講師登録
(常勤講師・非常勤講師)
できるなし(要項に年齢の条件がない。他府県・大阪市などで登録中でも登録できる)常勤講師は基本給与 約312,000円〜(経歴で加算)+ボーナス。非常勤講師は授業1コマ3,010円。欠員が出たときに声がかかる
② 大阪府の教員採用選考テスト
(正規の教諭)
できる(条件つき)令和9年度は「昭和40年4月2日以降生まれ」=採用日(2027年4月1日)時点で61歳まで正規の教諭。ただし60歳以降の採用は給料が7割水準で、大阪府の定年(2027〜2028年度は63歳)まで1〜2年。他県の勤続年数は退職金・ボーナスに通算されない
③ 再任用
(定年前再任用短時間勤務・暫定再任用)
できない——茨城県の制度。茨城県を退職した人が、大阪府の再任用を使うことはできない

つまり、「大阪府の学校で先生をする」こと自体は、免許が有効なら年齢に関係なくできます。問題は身分とお金で、校長だった人が大阪に移ると、常勤講師か非常勤講師か、あるいは給料7割の新採用の教諭か、のどれかになります。

📍 大阪市・堺市・豊能地区(豊中・池田・箕面・豊能・能勢)の小中学校は、大阪府ではなく各市の教育委員会が採用・講師登録を行っています。住む場所が大阪市なら、府と市の両方に登録しておくのが基本です。この記事では大阪府(府立学校+上記以外の市町村立学校)を中心に、大阪市の数字も添えています。

前提:役職定年60歳と、62歳→65歳へ延びる定年の関係

先に、制度の土台を整理します。2023年度から公務員の定年は2年に1歳ずつ上がっていて、2025〜2026年度は62歳、2027〜2028年度は63歳、2029〜2030年度は64歳、2031年度から65歳です(大阪府の条例の附則どおり。茨城県も法律に沿って同じ段階です)。

それと別に、校長・教頭などの管理職には「役職定年(管理監督職勤務上限年齢)」が60歳で設けられています。60歳の誕生日を迎えたあとの最初の4月1日に、校長の職を離れて教諭などに降任し、給料は60歳のときの7割水準になります。校長のまま続ける「特例任用」もありますが、原則ではありません。

いつ何が起きるか
60歳の誕生日この日以後に退職すると、退職手当は「定年退職」と同じ支給率になる(後述の特例)
60歳到達後の最初の4月1日役職定年。校長→教諭などに降任、給料は7割水準。ここから定年(62〜63歳)まで、教諭として茨城県で働くのが原則
定年(2026年度末なら62歳、2027〜2028年度末なら63歳)茨城県を定年退職。65歳までは茨城県の「暫定再任用」が使える

質問の「60歳で役職定年後に大阪府に移住」は、役職定年のタイミングで茨城県を辞めて(定年より1〜3年早い退職)、大阪で働くという計画です。このとき、茨城県の「教諭として定年まで働く」「再任用で65歳まで働く」という選択肢は手放すことになります。それでも大阪で働く道はある、というのがここからの話です。

道①:大阪府の講師登録——年齢不問で、いちばん現実的

大阪府教育委員会は、府内の公立学校で常勤講師・非常勤講師として働きたい人の登録を受け付けています。令和9年度の「講師制度の概要」で登録できる人の条件を見ると、

の3つで、年齢の条件はどこにもありません。大阪市の講師募集のページには、はっきり「年齢や経験は問いません」と書かれています。公立学校の講師(臨時的任用・会計年度任用職員)には定年の規定が適用されないので、62歳・65歳を超えても、欠員があり本人が働ける状態なら任用されます。実際、私の周りにも60代の常勤講師・非常勤講師の先生は何人もいます。

常勤講師の場合(月給・ボーナスあり)

項目大阪府(令和8年10月1日時点)
基本給与(給料+教職調整額+地域手当+義務教育等教員特別手当)大学新卒 約312,000円。経歴に応じて加算(ただし加算の対象は55歳までの経歴)
ボーナス期末手当・勤勉手当あり(基準日6月1日・12月1日に在職)
昇給なし(任用のたびに給料月額を決める)
退職手当引き続き6か月以上勤務すれば支給
任用欠員が生じたときに、住所・教科などの条件で声がかかる。年度途中の産休・病休の代替も多い

校長経験者の場合、教諭としての経歴が長いので、経歴加算で新卒よりはかなり上の額になります。ただし加算の対象は「55歳までの経歴」で頭打ちなので、校長時代の給料がそのまま続くわけではありません。目安としては、兵庫県の講師の給料の上限で見たように、講師の給料表は40代半ばで頭打ちになる県が多く、大阪府も同じ考え方です。

非常勤講師の場合(授業1コマいくら)

項目大阪府大阪市
報酬授業1コマ3,010円(55分未満の授業。長い授業は段階的に上がり最大4,210円)授業1時間3,110円
ボーナス年度内の任用6か月以上かつ週15時間30分以上なら期末手当・勤勉手当あり(非常勤講師のボーナスの計算)
働き方のイメージ週16コマ(1日3〜4コマ)なら月約14万円、ボーナスを入れて年約230万円の目安。授業のない8月は報酬が減る

💡 「校長をやった人が講師?」と思うかもしれませんが、学校現場では、管理職経験のある常勤講師・非常勤講師はとても頼りにされます。担任や校務分掌の負担が小さい分、授業と後輩の相談役に専念できる、という働き方を選ぶ人もいます。移住先で「まず講師登録」は、収入面でも生活面でも無理のない入り方です。

道②:大阪府の教員採用選考テスト——61歳まで受験できるが、給料は7割

大阪府は2026年度(令和8年度)の採用選考から年齢要件を大きく緩め、令和9年度(2026年実施・2027年4月採用)の受験資格は「昭和40年4月2日以降に出生していること」です。採用日の2027年4月1日時点で61歳までの人が受けられる、ということです。60歳の校長先生なら、受験資格の年齢だけ見れば受けられます。

ただし、受験案内の「勤務条件等」にこう書かれています。

「60歳に達した日以降の採用者の給料月額は上記により計算された額の7割水準となり、諸手当は手当の種類により7割水準となるものがあります」
「令和7年4月1日付けの採用から、国又は他の地方公共団体の教育職員から引き続き大阪府の教育職員に採用された場合であっても、退職手当に係る勤続期間及び期末手当・勤勉手当にかかる在職期間の通算は行いません」(令和9年度 大阪府公立学校教員採用選考テスト受験案内)

つまり、合格して教諭になっても、

という条件になります。身分は正規の教諭なので講師より安定しますが、お金の面で講師と大きく差がつくわけではありません。

どの選考区分で受けるか

大阪府には、筆答テストが免除される「現職教諭対象の選考」があります。令和9年度の資格要件は、①令和8年4月1日現在、大阪府外の公立学校などに「正規任用の教諭・養護教諭・栄養教諭」として在職し、通算2年以上の在職経験があること、②出願する校種・教科の授業を1年以上担当した実績があること、の2つです。

ここで注意が必要なのは、要件が「教諭等として在職」で、校長・教頭は「教諭等」に入らないことです。校長在職中は、この区分では受けられない読み方になります。役職定年で教諭に降任したあとなら「正規任用の教諭として在職」に当たり、過去の教諭時代の在職経験と授業担当実績も「通算」で数えられるので、該当する可能性があります【要確認:教育委員会に「校長から降任した教諭でも現職教諭対象の選考に出願できるか」を問い合わせてください】。該当しない場合は、一般選考(筆答テストあり)で受けることになります。

いずれにしても、出願は3〜4月、1次が6月、合格発表が9月という年1回のスケジュールです。役職定年の年の春に出願して、翌年4月に大阪府の教諭として採用、という流れになります。

道③:再任用は茨城県でしか使えない

「60歳を過ぎたら再任用」というイメージが強いので、「大阪府で再任用してもらえないか」と考えるのは自然です。でも、再任用は使えません。

定年引上げにともなう再任用の制度は2つあります。

どちらも、「その自治体を退職した人」を、その自治体が再び任用する制度です。各県の募集要項を見ても、対象者は「〇〇県の教職員として勤務し、定年退職した人」などと書かれていて、他県を退職した人は対象になっていません。茨城県の校長が大阪府で「再任用」されることはなく、大阪府で働くなら道①か道②で、ゼロから任用される形になります。

💡 逆に言うと、茨城県に住み続ける(または茨城県内で通える範囲に住む)なら、役職定年後に教諭として定年まで働き、その後65歳まで暫定再任用、という「いちばん収入が落ちにくい道」が残っています。移住の時期を定年退職後(62〜63歳)にずらせるなら、その選択肢もあわせて検討する価値があります。

お金の注意点——退職金・年金・ボーナス・勤続年数

① 退職金は、60歳以降の退職なら「定年退職扱い」になる

定年より前に自分から辞めると「自己都合退職」で退職手当の支給率が下がる、というのが従来のルールでした。定年引上げに合わせて、60歳に達した日以後に退職した場合は、当分の間、自己都合でも「定年退職」と同じ支給率で退職手当を計算する特例が設けられています(国家公務員退職手当法の改正に合わせて各県が条例で定めています。宮城県教育委員会の説明では「定年扱い退職」と呼ばれています)。

さらに、役職定年後に給料が7割になってから退職しても、退職手当は給料が高かった時期(校長時代)を基準に計算する「ピーク時特例」があるので、7割の給料のせいで退職金が減ることもありません。

つまり、「60歳の役職定年で茨城県を辞めて大阪へ」という計画でも、退職金の面では定年退職と大きく変わらないと考えてよいはずです。ただし、特例の細かい条件(60歳時点の勤続年数など)は県の条例によるので、茨城県教育委員会の福利担当に「60歳で退職した場合の退職手当の算定」を確認してください【要確認】。

② 年金は65歳まで出ない

今60歳前後の男性(1961年4月2日以降生まれ)には、65歳前にもらえる「特別支給の老齢厚生年金」がありません。60歳で茨城県を辞めてから65歳までの5年間は、年金なし・退職金と大阪での収入で生活する期間になります。常勤講師なら月約30万円台、非常勤講師なら月十数万円、という収入の差は、この5年間の家計にそのまま効きます。

③ ボーナス・退職金の勤続年数は引き継がれない

道②の受験案内にあったとおり、大阪府は令和7年4月1日採用分から、他県の教員から引き続き採用された場合でも退職手当・ボーナスの在職期間を通算しません。講師の場合も同じで、茨城県の30数年は茨城県の退職金で精算され、大阪府では「勤続1年目」から数え直しです。1年目の6月のボーナスは在職2か月分(30%)しか出ない、という非常勤講師のボーナスの記事で書いた話が、常勤講師でも教諭でも起きます。

④ 共済・健康保険の切り替え

茨城県を退職すると公立学校共済組合の組合員資格を失い、大阪府で常勤講師(臨時的任用)になれば大阪府の公立学校共済組合に新たに加入します。非常勤講師は勤務時間によって共済か協会けんぽ・国民健康保険かが分かれます。退職から次の任用までに空白期間があると、その間は国民健康保険・国民年金の手続きが必要です。大阪府の講師は「欠員が生じたときに採用」なので、4月1日からすぐ任用されるとは限らないことも、家計の計画に入れておいてください。

おすすめの段取り(私ならこうする)

  1. 役職定年の前年度の秋:茨城県教育委員会に「60歳で退職した場合の退職手当の算定」を確認。あわせて、茨城県に残る場合(教諭→定年→暫定再任用)の収入見込みも出してもらい、移住時期と比べる
  2. 同じ冬〜春:大阪府(住む場所が大阪市・堺市・豊能地区なら、その市にも)の講師登録を済ませる。登録は年度ごとで、大阪府は令和9年度分を受付中。他県在職中でも登録できる
  3. 3〜4月:大阪府の教員採用選考テストを受けるなら出願。「現職教諭対象の選考」に当たるかは事前に教育委員会へ問い合わせる
  4. 退職〜移住:空白期間の健康保険・年金の手続き。常勤講師の声がかかるまでは非常勤講師で、という組み合わせも多い

私なら、講師登録を軸にして、採用試験は「条件が合えば受ける」程度に考えます。給料7割・定年まで1〜2年の新採用教諭と、年齢の縛りなく働ける常勤講師とで、お金の面での差は大きくなく、講師のほうが働く期間を自分で決められるからです。

よくある質問

Q. 校長の経験は、大阪府で何か有利になりますか?

A. 採用選考に「管理職経験者の加点」はありません。講師の経歴加算も「55歳までの経歴」が上限で、校長時代の給料が反映されるわけではありません。ただ、現場では管理職経験のある講師は重宝されますし、常勤講師の任用で声がかかりやすい、という形で効いてくると思います。

Q. 私立学校や、教育委員会の指導員のような仕事は?

A. 私立学校は各校の募集次第で、年齢の上限を設けている学校もあればない学校もあります。教育委員会や学校を支援する非常勤の職(初任者の指導、学校運営の支援など)は自治体ごとに募集があり、管理職経験者が就くことが多い分野ですが、募集の有無も条件もまちまちなので、この記事では扱っていません。

Q. 62歳の定年まで茨城で働いてから大阪へ移ると、何が変わりますか?

A. 退職金は定年退職として満額、茨城県の暫定再任用を使う道は移住で手放す形になります。大阪府では、やはり講師登録か採用選考テスト(年齢要件は年度ごとに確認)です。62歳なら令和9年度の要件(昭和40年4月2日以降生まれ)には外れる可能性があるので、講師登録が中心になります。

Q. 役職定年で校長を降りたあと、茨城県で再任用になる人もいると聞きました

A. 役職定年のあとは、教諭として定年まで勤める「降任」が原則です。60歳以降に定年前で退職して短時間で働く「定年前再任用短時間勤務」もありますが、いずれも茨城県の中の制度です。大阪府に移住するなら、この制度は使えません。

まとめ

✅ 役職定年後に大阪府で教員として働く、3行まとめ

・働けます。道は「大阪府の講師登録(年齢不問・他県で登録中でも可)」と「教員採用選考テスト(令和9年度は昭和40年4月2日以降生まれ=採用時61歳まで・60歳以降の採用は給料7割)」の2つ。再任用は茨城県の制度なので大阪では使えない
・常勤講師なら基本給与 約312,000円〜(経歴加算あり・55歳までの経歴が上限)+ボーナス、非常勤講師なら授業1コマ3,010円(大阪市3,110円)。大阪市・堺市・豊能地区は別に登録が必要
・退職金は60歳以降の退職なら定年退職と同じ支給率(+ピーク時特例)。年金は65歳まで出ず、茨城県の勤続年数は大阪府のボーナス・退職金に引き継がれない。退職手当の算定は茨城県教育委員会に要確認

質問をくださった方、ありがとうございました。「校長を60歳で降りたあと、どこで、どう働くか」は、これから毎年たくさんの先生が直面する問題です。移住先の県が違う方も、同じ考え方で調べられますので、県名を添えて質問箱に投げてください。

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