こんにちは、けいです。

匿名の質問箱に、こんな質問をいただきました。

「小学4年生の頃から小学校の先生を目指していて、現在教育大学に通っている大学1年生です。大阪、堺、大阪市のどの自治体で受けようか迷っています。地域手当や福利厚生、メリットデメリットなどまとめて頂けたら嬉しいです。」

大阪で小学校の先生になるには、「大阪府」「大阪市」「堺市」の3つの採用試験があります(正確には豊能地区も入れて4つ)。同じ大阪なのに、採用する自治体がちがうと、給料も、異動の範囲も、倍率もちがいます。

答えを先に言うと、お金の面でいちばん有利なのは大阪市です。ただ、差は月1万円ちょっと。福利厚生はほとんど同じなので、最後は「どこで、どんな学校で働きたいか」で決めていい、というのが私の考えです。

📌 この記事でわかること

  • 小学校の先生(大卒1年目)の月給を、大阪府・大阪市・堺市で比較
  • 差の正体は「地域手当」——16%・12%・12.8%のちがい
  • 今年(2026年)の人事委員会勧告で、来年どう変わるか
  • 福利厚生(共済組合・住居手当・休暇)は、どれくらいちがうのか
  • お金以外の違い——異動の範囲・倍率・併願できないこと
  • 大学1年生のうちにやっておくといいこと

結論:お金だけなら大阪市。でも差は月1万円ちょっと

小学校の先生として大卒で採用された1年目の月給(額面)は、こうなります。

採用する自治体月給(大卒1年目・小学校)地域手当
大阪市329,900円16%
堺市約318,900円12%
大阪府約317,000円12.8%

大阪市が、堺市・大阪府より月1万円ちょっと高い。ボーナスも月給に連動するので、年収にすると20万円くらいの差になります。

ただ、給料の「もと」になる給料表は、3つともほぼ同じです。差のほとんどは、勤務地によって上乗せされる「地域手当」の率のちがいです。

📌 金額は、いずれも「給料+教職調整額+地域手当+義務教育等教員特別手当」の合計(独身・扶養なし・住居手当なし)。大阪市は市の公式発表(2026年4月1日現在の予定額)、大阪府は府の公式発表(約317,000円)、堺市は公式の金額が公開されていないので、条例と規則から私が計算した概算です。

月給くらべ——大卒1年目・小学校(2026年4月時点)

中身を見ていきます。教員の月給は、おもに次の4つでできています。

教員の月給(1年目・小学校)
給料 + 教職調整額(5%) + 地域手当 + 義務教育等教員特別手当

大阪市:329,900円(市の公式)

大阪市は「新規採用者の給与等」として、合計額を公表しています。小・中学校の教員で、短大卒304,700円・大卒329,900円・修士修了330,300円(2026年4月1日現在の予定額)。市のページには「全国でも特に高い水準を維持しています」と書かれていますが、地域手当が16%なので、実際そのとおりです。

堺市:約318,900円(条例から計算)

堺市は合計額を公表していないので、条例と規則から計算します。大卒の教諭は「2級17号給」からのスタートで、給料は268,900円です。

項目計算金額
給料(小中学校等教育職給料表 2級17号給)—268,900円
教職調整額268,900円×5%13,445円
地域手当(給料+教職調整額)×12%33,881円
義務教育等教員特別手当(2級17〜20号給)—2,700円
合計318,926円

堺市の地域手当は、2025年度だけ11%の経過措置があり、2026年度から条例どおりの12%になっています。

大阪府:約317,000円(府の公式)

大阪府は、府の教員ポータルサイトで小・中学校の大卒初任給を「約317,000円」と公表しています。中身は、給料266,900円(2級17号給)+教職調整額13,345円+地域手当12.8%=35,871円+特別手当1,700円=317,816円。くわしくは大阪府の教員の初任給の記事にまとめています。

ちなみに、大阪府で小学校の先生になると、勤務先は大阪市・堺市・豊能地区をのぞく府内の市町村立の小学校です。採用は府、勤務は各市町村の学校、という形になります。

差の正体は「地域手当」

3つの給料表を並べると、大卒1年目の給料はどこも26万円台後半で、ほぼ同じです。ちがうのは地域手当の率だけ。

自治体給料(大卒1年目)地域手当の率地域手当の額(概算)
大阪市(非公開・26万円台後半)16%約45,000円
堺市268,900円12%33,881円
大阪府266,900円12.8%35,871円

地域手当は、国が「その地域の民間の賃金水準」をもとに決めている率で、大阪市は国の基準どおり16%、堺市は12%です。大阪府は府内一律12.8%(複数の市町村の率をならした値)。

つまり、大阪市で先生になると、同じ仕事をしていても、地域手当の分だけ月1万円ほど多くもらえるということです。ボーナス(期末手当・勤勉手当)も地域手当を含んだ額をもとに計算するので、年収の差は月給の差より少し大きくなります。

今年の勧告で、来年はどう変わる?

2026年10月に、3つの自治体の人事委員会がそれぞれ「今年の給料をこう変えてください」という勧告を出しました。

自治体勧告の内容(2026年10月)
大阪市民間との差12,627円(3.00%)を解消するため給料表を引上げ。大卒初任給は9,500円引上げ。ボーナス4.65→4.70か月。2026年4月にさかのぼって実施
堺市民間との差11,886円(2.81%)を解消するため給料表を引上げ。初任給は「近隣市との均衡を考慮して引上げ」、教育職の給料表は「大阪府・大阪市を始め近隣市の動向を踏まえて改定」。ボーナス4.65→4.70か月
大阪府給料表を引上げ(大卒1年目の給料266,900→276,900円)。地域手当を12.8%→13.2%に引上げ。ボーナス4.65→4.70か月。勧告どおりなら小学校の初任給は約330,800円

3つとも「初任給引上げ+ボーナス4.70か月」で足並みがそろっています。大阪府は地域手当も上がるので、府と大阪市の差は少し縮まりますが、順位(大阪市>堺市≒大阪府)は変わらない見込みです。堺市も「大阪府・大阪市の動向を踏まえて」とはっきり書いているので、3つが大きく離れることはなさそうです。

📰 勧告は「こう変えてください」という提案で、条例が改正されて正式に決まります。この記事の金額は2026年10月26日時点の条例によるもので、改正後に数字を更新します。全国の勧告の状況は2026年 人事委員会勧告まとめへ。

福利厚生は、ほとんど同じ

質問にあった「福利厚生」ですが、正直に言うと、3つでほとんど差がありません。公立学校の先生は、どこの自治体でも同じ仕組みの上に乗っているからです。

項目大阪市堺市大阪府
健康保険・年金3つとも「公立学校共済組合」(出産費・高額医療費の給付、人間ドック、宿泊や結婚式場の割引など)
住居手当の上限(賃貸)28,000円(市内の住宅なら30,500円)27,000円(市内の住宅なら30,000円)28,000円
ボーナス年2回(6月・12月)・年4.65か月分(2025年度)→勧告どおりなら4.70か月分
教職調整額給料の5%(2026年)→毎年1%ずつ上がって2031年に10%
年次有給休暇年20日
互助会大阪府教職員互助組合堺市の互助組織大阪府教職員互助組合

住居手当は、市内に住むと上限が少し上がる「市内加算」が大阪市と堺市にあります。一人暮らしで市内の賃貸に住むなら、ここで2,000〜3,000円ちがいますが、「福利厚生で選ぶ」ほどの差ではありません。

夏季休暇・産前産後休暇・育児休業・子の看護休暇などの特別休暇も、3つとも同じようにあります。大阪市は小学6年生までの子を育てる職員が勤務時間を1日2時間まで短くできる「育児職免」の拡充を公表していますが、こうした制度は他の自治体も追いかけるので、差は年々小さくなっています。

お金以外の違い——ここが本当の決め手

給料も福利厚生もそこまで変わらないなら、何で決めるか。私は、次の3つが本当の決め手だと思います。

① 異動の範囲

自治体異動の範囲
大阪市市内24区の小学校の中で異動
堺市市内7区の小学校の中で異動
大阪府採用された地区(三島・北河内・中河内・南河内・泉北・泉南)の中で、市町村をまたいで異動

「実家から通いたい」「この街でずっと働きたい」なら、大阪市か堺市の採用が安心です。市内で完結するので、引っ越しを考える必要はほぼありません。大阪府は採用のときに希望する地区を出しますが、地区の中では市町村をまたいで異動するので、通勤時間が変わることはあります。

② 倍率と採用数

自治体2027年度採用の小学校の倍率採用予定数(小学校)
大阪府志願2.1倍・最終1.7倍多い(府内の40市町村分)
大阪市志願1.8倍約550人
堺市志願7.9倍約40人(前年は約105人)

堺市は、2027年度採用で採用予定数が前年の3分の1近くに減り、倍率が一気に上がりました。堺市は規模が小さいぶん、年によって採用数が大きく動くのが特徴です。「堺市で働きたい」という強い希望があるなら、倍率が高い年に当たることも覚悟しておく必要があります。

大阪府と大阪市は採用数が多く、ここ数年は2倍前後で安定しています。

③ 学校の環境

大阪市は学校の数が多く、都市部ならではの課題(家庭環境のちがい、外国にルーツのある子どもなど)も多い分、いろいろな経験が積めます。堺市は「堺でせんせい!」という合言葉で、市として教員の育成に力を入れています。大阪府は郊外の落ち着いた地域から、都市部に近い地域まで、市町村によって雰囲気がかなりちがいます。

④ 併願はできない

大阪府・大阪市・堺市(と豊能地区)は、1次試験が同じ日です(2026年実施はいずれも6月13日)。だから、この中から1つに絞って受けることになります。「とりあえず全部受けて、受かったところへ」はできません。

大学1年生のうちにやっておくといいこと

まだ大学1年生なので、決めるのは3年生の春で大丈夫です。それまでに、やっておくといいことを3つ。

  1. 3つの自治体の学校を、実際に見る。 学生ボランティアや学校見学の制度は、大阪市・堺市・府内の市町村それぞれにあります。給料の表を見比べるより、「この学校で働きたい」と思えるかどうかのほうが、ずっと大事です。
  2. 3年生から受けられる「前倒し選考」を調べておく。 大阪市・堺市・豊能地区には、大学3年生を対象にした選考があります。制度は毎年少しずつ変わるので、2年生の終わりごろに最新の受験案内を確認してください。
  3. 「家の近く」で働きたいかどうかを、自分に聞いておく。 異動の範囲は、採用されたあと何十年もついてまわります。お金の差よりも、生活への影響が大きいところです。

💡 私の意見を一言で言うと、お金だけで決めるなら大阪市。家の近くでずっと働きたいなら堺市。倍率の安定と、選べる市町村の多さなら大阪府。どれを選んでも、小学4年生からの夢をかなえる道です。

よくある質問

Q. 大阪府で採用されたら、大阪市や堺市の小学校には行けないのですか?

A. 行けません。大阪市と堺市(と豊能地区)は、それぞれが独立して教員を採用しているので、大阪府の採用で配置されるのは、それ以外の市町村立の学校です。

Q. 地域手当16%の大阪市は、ずっと有利なままですか?

A. 地域手当の率は、国の基準の見直しで変わることがあります。大阪府は今年の勧告で12.8%→13.2%に上がる見込みで、差は少しずつ縮まっています。それでも、当面は大阪市がいちばん高い状態が続きそうです。

Q. 堺市の318,900円は、公式の数字ですか?

A. いいえ。堺市は初任給の合計額を公表していないので、条例の給料表(2級17号給268,900円)と、地域手当12%・教職調整額5%・特別手当2,700円から私が計算した概算です。実際の金額は受験案内や採用時の通知で確認してください。

Q. 大阪市・堺市・大阪府を、年を変えて受け直すことはできますか?

A. できます。1次試験が同じ日なので同じ年に併願はできませんが、翌年に別の自治体を受けることは自由です。講師をしながら受け直す人も多くいます。

まとめ

✅ 大阪府・大阪市・堺市、どこで受ける? 3行まとめ

・小学校の先生(大卒1年目)の月給は、大阪市329,900円・堺市約318,900円・大阪府約317,000円。差の正体は地域手当(16%・12%・12.8%)で、年収にして20万円ほど
・福利厚生(共済組合・住居手当・ボーナス・休暇)はほとんど同じ。今年の勧告も3つとも「初任給引上げ+ボーナス4.70か月」で足並みがそろっている
・本当の決め手は、異動の範囲(市内だけか、地区内か)・倍率(堺市は年によって大きく動く)・そして1次試験が同じ日で併願できないこと。大学3年の春までに、3つの学校を実際に見て決める

質問をくださった方、ありがとうございました。小学4年生のころからの夢を、大学1年生で具体的に考えはじめているのは、本当にすごいことです。どこを選んでも、応援しています。

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