「埼玉の先生って、40歳でいくら?」に答えてみる
47都道府県の教員給料シリーズ、第8弾は埼玉県です。人口約730万人の全国5位、都内に通勤する人も多い「東京のお隣」。前回の北海道が地域手当ほぼ0%でシリーズ最下位になったのに対して、埼玉は県内どこで働いても一律8.3%の地域手当が付きます。そして調べていくと、給料表の備考欄にシリーズ初の「隠れ上乗せ」を見つけてしまいました。
このシリーズは、県ごとの比較ができるように「大卒22歳で採用されて、40歳になったとき」に揃えて計算しています。埼玉は県の給料表(教育職給料表)が公開されているので、40歳時点の号給から給料・ボーナス・手取りを具体的な金額で出していきます。
💡 この記事でわかること
・埼玉の高校教員、40歳の額面年収はいくらか
・手取りにすると、いくら残るのか
・給料・教職調整額・地域手当・ボーナスの内訳
・県内一律8.3%の地域手当と、給料表に隠れた「×101.571/100」の正体
結論:40歳で額面 約716万円・手取り 約551万円
先に答えからいきます。埼玉県の給料表では、県立高校教員の40歳(採用18年目)時点の給料は約37.8万円。ここに教職調整額(5%)・地域手当(8.3%)・ボーナス(年4.65ヶ月)を足して年収を計算すると、次のようになります。
| 項目 | 金額(年・概算) |
|---|---|
| 額面年収(税込) | 約 716万円 |
| └ うち 毎月の給与(12ヶ月分) | 約 516万円 |
| └ うち ボーナス(年4.65ヶ月) | 約 200万円 |
| 差し引かれるもの(社会保険+税) | 約 165万円 |
| 手取り年収 | 約 551万円 |
ざっくり、「40歳・額面716万・手取り551万」。月の手取りにすると33〜34万円、それに加えてボーナスが年2回、というイメージです。手取り率はおよそ77%で、これまでの都道府県と同じ水準です。
シリーズで並べると、大阪(約724万円)に約8万円差まで迫って、神奈川(約703万円)を上回る7都道府県中の4位。派手さはないのに気づいたら上位にいる——住みやすさランキングの埼玉みたいな結果になりました。
内訳① 40歳の給料——給料表に隠れた「×101.571」の上乗せ
まず毎月の給与から。40歳時点の内訳はこうなります。
| 項目 | 月額(概算) |
|---|---|
| 給料(給料表の額 372,300円 × 101.571/100) | 約 378,100円 |
| 教職調整額(給料の5%・教員全員に支給) | 約 18,900円 |
| 地域手当(8.3%・県内一律) | 約 33,000円 |
| 給与月額(上記の合計) | 約 430,000円 |
1行目、見慣れない掛け算に気づきましたか? 実は埼玉の給料表には備考欄に「給料月額は、給料表に掲げる額×101.571/100とする」という一文があります。つまり、表に書いてある数字より、実際の給料は1.571%高いんです。40歳モデルだと表の372,300円に対して、実際に支給されるのは約378,100円。月に約5,800円、年収ベースだとボーナスへの跳ね返りも含めて約11万円分の「隠れ上乗せ」になります。
🔍 なんでこんな仕組みなの?
給料表を書き換える代わりに「掛け率」で水準を調整している、埼玉県の条例上の仕組みです。給料表の数字だけを他県と見比べると埼玉を過小評価してしまう、シリーズ的には要注意のトラップでした。この記事の計算はもちろん掛け率を反映した実際の支給額で行っています。
内訳② ボーナスは年4.65ヶ月
ボーナス(期末手当+勤勉手当)は、令和7年の埼玉県人事委員会勧告で0.05ヶ月分引き上げられて年間4.65ヶ月分。愛知・福岡・北海道と同じ水準です。「給料+教職調整額+地域手当」をベースに計算すると、年間で約200万円(税込)になります。
シリーズで何度も書いてきた通り、ボーナスも「給料+地域手当」ベース。地域手当8.3%が毎月の給与だけでなくボーナスにも掛かるので、年間トータルでは地域手当だけで約55万円の上乗せになっています。
額面→手取り 引かれるものの中身
額面716万円から引かれるのは、大きく分けて2つです。
| 引かれるもの | 年額(概算) | 中身 |
|---|---|---|
| 社会保険料(共済掛金) | 約 103万円 | 年金 約9.15% + 健康 約4.5% + 介護(40歳〜) 約0.9% |
| 所得税・住民税 | 約 62万円 | 給与・ボーナスにかかる税金 |
| 合計 | 約 165万円 | — |
結果、手取りはおよそ551万円。月にならすと毎月の手取りが33〜34万円、ボーナスの手取りが年2回で計150万円前後、というイメージです。
埼玉の地域手当は「県内どこでも一律8.3%」
シリーズ恒例、年収差の主犯・地域手当のチェックです。埼玉県の教職員の地域手当は、こうなっています。
| 勤務地 | 地域手当の支給割合 |
|---|---|
| 埼玉県内すべて(さいたま市も秩父も) | 一律 8.3% |
ポイントは「一律」であること。北海道は「札幌3%・それ以外0%」、大阪は「大阪市16%・市外はそれ以下」と勤務地で差が付く県が多い中、埼玉は神奈川(一律12.45%)と同じ県内均一型です。都市部の学校でも山あいの学校でも、地域手当で差が付かない。異動で年収が上下しない安心感は、この型の隠れたメリットです。
| 都道府県 | 40歳モデルの地域手当 | 額面年収 |
|---|---|---|
| 愛知県 | 一律 8.5% | 約755万円(1位) |
| 東京都 | 20%(23区) | 約740万円(2位) |
| 大阪府 | 大阪市16%など | 約724万円(3位) |
| 埼玉県 | 一律 8.3% | 約716万円(4位) |
| 神奈川県 | 一律 12.45% | 約703万円(5位) |
| 福岡県 | 一律 5.4% | 約686万円(6位) |
| 北海道 | 札幌3%・道内他 0% | 約661万円(7位) |
あれ?と思いませんか。埼玉(8.3%)は神奈川(12.45%)より地域手当が4ポイント以上低いのに、年収では埼玉が上。種明かしは給料本体です。埼玉の40歳の給料(掛け率込み 約37.8万円)は神奈川(約35.9万円)より約2万円高く、地域手当の差をひっくり返しました。愛知が「基本給トップ×地域手当8.5%」で1位になったのと同じ、給料本体で稼ぐ型です。
お隣・東京との差は24万円——思ったより小さい理由
埼玉の先生にとって気になるのは、やっぱり荒川の向こう側でしょう。同じ40歳モデルで、東京は額面約740万円。その差は約24万円です。
「地域手当が20% vs 8.3%なんだから、もっと差が付くんじゃないの?」と思いますよね。実はここにもシリーズおなじみの「ねじれ」があります。東京の給料表は40歳時点で約34.8万円と、実はシリーズ最下位クラス。埼玉は掛け率込みで約37.8万円と、給料本体では東京より約3万円も高いんです。地域手当の12ポイント近い差を、給料本体でかなり巻き返している——それが「差は24万円どまり」の理由です。
📍 通勤圏で考えると
埼玉県内から都内の学校に勤める(=東京都の教員になる)か、地元埼玉で教壇に立つか。年収差は約24万円ですが、東京は23区外だと地域手当が下がる地域もあり、通勤時間・異動範囲まで含めると「圧倒的に東京が得」とは言い切れない距離感です。地域手当の仕組みそのものは東京の記事(地域手当の正体)でどうぞ。
埼玉の先生の給料も、いま「上がり局面」
埼玉も例外なく、給料は上がり局面です。令和7年10月の埼玉県人事委員会勧告は、月例給・ボーナスの両方を引上げる内容でした。
📈 令和7年勧告のポイント(埼玉県)
・民間との差を埋めるため給料表を引上げ(若年層に重点を置きつつ全職員が対象)
・ボーナスは4.60ヶ月→4.65ヶ月に引上げ
・教職調整額も2026年1月から5%となり、2031年にかけて段階的に10%へ
公務員の給料は「地元の民間に合わせる」仕組み。首都圏の民間賃金の伸びは埼玉の給料表にもストレートに効いてきます。給料本体で稼ぐ型の埼玉にとって、給料表の引上げ+教職調整額アップの底上げは追い風です。
読むときの注意(前提と計算方法)
- 県立高校教員(教育職給料表⑴)のモデルです:大卒22歳採用(2級9号給)→40歳(2級81号給)で計算しました。さいたま市立の小中学校の先生は政令市であるさいたま市の給与条例が適用されるため、少し数字が変わります。
- 給料は「給料表の額×101.571/100」で計算しています:埼玉県の給料表備考欄に定められた掛け率です。表の額(372,300円)ではなく実際の支給額(約378,100円)を使っています。
- 地域手当は県内一律8.3%です:県外(都内等)の公署に勤務する場合は別の率が適用されるケースがあります。
- 扶養手当・住居手当・部活動手当などは含めていません:家族構成や担当で人により大きく変わるためです(他県の記事と同じ前提)。
- 教職調整額は現在の5%で計算しています:2031年にかけて段階的に10%へ引き上げ予定です。
- 数字は「その時点の公式データ」です:給料表は取得時点(2026年6月)のもので、各県とも今後の勧告反映で金額が動きます。シリーズの比較は「その時点の公式データ同士」の比較になります。
- 手取りは家族構成で変わる:手取り率77%は概算です。
まとめ+シリーズランキング更新
✅ この記事のまとめ(埼玉・高校教員・40歳モデル)
・額面年収 約716万円(毎月の給与 約516万+ボーナス 約200万)
・手取り年収 約551万円(手取り率 約77%)
・給料表には「×101.571/100」の隠れ上乗せがあり、実際の給料は表より1.571%高い
・地域手当は県内どこでも一律8.3%。異動で年収が変わらない安心型
・神奈川(12.45%)より地域手当が低いのに、給料本体の強さで4位に浮上
・お隣・東京との差は約24万円。地域手当20%との差は給料本体でかなり巻き返している
・令和7年勧告は給料表・ボーナスとも引上げ。上がり局面は埼玉も同じ
・数字は公式データからの推計。勤務先・昇任・家族構成で変動します
これでシリーズは愛知755万 → 東京740万 → 大阪724万 → 埼玉716万 → 神奈川703万 → 福岡686万 → 北海道661万の7都道府県。上位4つが8〜24万円差にひしめく混戦になってきました。最新のランキングは47都道府県まとめページでいつでも見られます。
このシリーズは47都道府県ぜんぶを目指しています。「うちの県もやってほしい」「実際の数字と違う!」があれば、ぜひXで教えてください。
※出典・データの根拠:埼玉県「学校職員の給与に関する条例」教育職給料表⑴(2級81号給372,300円・備考欄の掛け率101.571/100、2026年6月取得時点)/埼玉県教育委員会「知っていますか?あなたの給与と旅費〜諸手当・旅費のあらまし〜」(地域手当:県内一律8.3%・支給額の計算式)/埼玉県人事委員会 令和7年「職員の給与等に関する報告(意見)及び勧告」(期末勤勉手当 年4.60→4.65ヶ月・給料表引上げ)。金額は前提条件により変動します。